「電力会社を変えると安くなると聞くけれど、停電が増えたり、つぶれたりしたら困る」「一度変えたら、元に戻せないのでは」。切り替えを迷っている人の不安は、だいたいこの3つに集まります。
この記事では、切り替えの仕組みを先に説明し、そのうえで 安くなる人・ならない人の違い と、契約前に確認する項目を整理します。工事も費用もかからない見直しなので、設備を買う前にやる価値があります。
電力会社を変えると、停電しやすくなりますか?
なりません。理由は、電気の流れが「作る会社」「送る会社」「売る会社」に分かれているからです。
| 役割 | 誰がやるか | 切り替えで変わるか |
|---|---|---|
| 発電 | 発電事業者(大手電力、新電力の自社電源、市場からの調達など) | 契約先が仕入れ方を選ぶ |
| 送配電(電柱・電線・変電所) | 地域の一般送配電事業者(中国電力ネットワークなど)。地域に1社 | 変わらない |
| 小売(契約・請求) | 小売電気事業者(大手電力の小売部門、新電力) | ここだけ変わる |
家に届く電気は、どの会社と契約していても同じ電線を通って来ます。停電の復旧も、同じ送配電会社がやります。品質も停電のしやすさも変わりません。
2016年の小売全面自由化からこの仕組みで動いており、契約先の会社が事業をやめた場合でも、電気が止まらないように別の事業者が供給を引き継ぐ決まり(低圧の家庭は地域の大手電力の小売部門、高圧は送配電事業者による最終保障供給)が法律で定められています。実際に2022年ごろ、燃料高で撤退した新電力が相次ぎましたが、そのときも電気が止まった家庭はありません。ただし、引き継ぎ先の料金はそれまでと同じではないので、通知が来たら新しい契約先を選び直す必要があります。
切り替えると、誰でも安くなりますか?
なりません。安くなりやすい人と、なりにくい人がはっきりあります。
安くなりやすい人
- 使用量が多い(月300kWh以上が続く)世帯。3段階料金の高い段の単価が、新電力のプランでは一律で安いことが多いため
- ガス・通信などのセット割が使える会社がある
- 大手電力の規制料金(従量電灯)のまま、一度も見直していない
安くならない、または高くなる可能性がある人
- 使用量が少ない(月150kWh以下)世帯。基本料金が0円でも、単価が高めだと逆転する
- オール電化で、深夜が安い専用プランを使っている。専用プラン以外に変えると割高になりやすい
- 集合住宅で建物全体が一括受電している(個別に切り替えられない)
比較サイトの試算は、入力した使用量をもとに計算しますが、特典(キャッシュバックなど)を含んだ年間額で並べていることがあります。 特典を除いた「毎月の単価の差」で見てください。特典は1回きり、単価の差は毎月続きます。
「市場連動型」と書かれたプランは、電力の卸市場(JEPX)の価格に単価が連動します。市場が落ち着いているときは安いのですが、2021年1月のように市場価格が急騰すると、1か月の電気代が数倍になった例があります。毎月の支払いを安定させたい家庭・事業所は、固定単価のプランを選ぶほうが向いています。
契約前に、何を確認すればよいですか?
申し込む前に、次の6つを契約先のサイトか「供給条件説明書」で確認します。分からなければ、申し込み窓口に聞いてください。
1. 単価の種類:固定か、市場連動か
「市場連動」「市場価格調整」の文字があれば、価格が大きく動く可能性があります。
2. 燃料費調整額の上限の有無
規制料金には上限がありますが、自由料金の多くは上限がありません。燃料高の年に差が出るところです。
3. 解約金・最低利用期間
「1年未満の解約で○○円」のような条件がある会社があります。無い会社も多いので、比べる項目に入れてください。
4. 支払い方法
クレジットカードのみの会社があります。口座振替がよい場合は先に確認。
5. 燃料費調整・再エネ賦課金を含めた総額で試算されているか
再エネ賦課金(2026年度 4.18円/kWh)は全国一律で、どの会社でも同じです。試算に含まれていないと安く見えます。
6. 撤退時の連絡の約束
国の指針では、供給をやめる場合は15日前までに知らせることが望ましいとされています。約款に記載があるか見ておきます。
切り替えの手続きは、面倒ですか?
面倒ではありません。新しい会社に申し込むと、その会社が今の会社への解約連絡を代わりに行います。自分で今の会社に電話する必要はありません。
- 必要なもの:今の明細に書いてある「お客さま番号」と「供給地点特定番号(22桁)」
- 工事:原則不要。スマートメーター(通信機能付きの電力計)がまだの家は、送配電会社が無料で交換に来る(立ち会い不要の場合が多い)
- 切り替わる日:次の検針日から。申し込みから2週間〜1か月程度
元に戻すこともできます。 大手電力の規制料金(従量電灯)に戻すことも、別の新電力に移ることも、同じ手続きです。「一度出たら戻れない」ということはありません。ただし、戻す先のプランが今も新規受付しているかは確認してください。
事業所(店・事務所・工場)の場合は、どう考えますか?
低圧の店舗・事務所は家庭とほぼ同じ考え方です。動力(三相200V)の契約がある場合は、電灯と動力を一緒に切り替えられる会社を選ぶと手間が減ります。
高圧(キュービクルがある工場・倉庫)は、個別見積になります。電力会社に過去12か月の「30分ごとの使用電力のデータ」を出してもらい、それを複数社に渡して見積を取る形です。高圧の電気代は契約電力(過去1年の最大デマンド)で基本料金が決まるため、会社を変える前に 自分のデマンドの山を把握する ほうが効果が大きいことがよくあります。くわしくは 小さな事業所の電気代を下げる順番 に書きました。
まとめ:まず何をするか
- 切り替えても 停電は増えない。 送る会社は同じ。契約先が撤退しても電気は止まらない仕組みがある
- 安くなるのは主に 使用量が多い世帯。少ない世帯・オール電化は専用プランと比べて慎重に
- 市場連動型は避ける か、仕組みを理解したうえで選ぶ
- 確認する6項目:単価の種類、調整額の上限、解約金、支払い方法、総額での試算、撤退時の連絡
- 手続きは申し込むだけ。元に戻すこともできる
比較するときは、直近12か月の使用量(kWh)が手元にあると試算が正確になります。まだ記録していない人は、電気代の家計簿 の表を先に作ると、比較が一度で済みます。
直近12か月の使用量を入れて、固定単価のプランで比べてください。特典は除いた単価の差で見るのがコツです。
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- 小売全面自由化の仕組み、発電・送配電・小売の分離:資源エネルギー庁「電力の小売全面自由化」
- 小売電気事業者の撤退時の需要家保護(みなし小売電気事業者の供給義務、最終保障供給):電力・ガス取引監視等委員会 制度設計専門会合資料
- 撤退時に15日前までの連絡が望ましいとする指針:経済産業省「電力の小売営業に関する指針」(電力・ガス取引監視等委員会掲載)
- 再エネ賦課金 2026年度 4.18円/kWh:東京電力エナジーパートナー「再生可能エネルギー発電促進賦課金」で確認
- 2021年1月の卸電力市場価格の高騰:電力・ガス取引監視等委員会の検証資料(2021年)
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